別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「最近は嫌なことばっかり。あなたに最初に会ったときは彼氏にふられた直後なの」
「そのあと殴られるって、最悪じゃん」
 冬和は頷いた。

「会社では元カレが新しい彼女といちゃいちゃしてるし」
「二股されたってこと?」
「そうかもね」
「ひどい。女を落として別れさせてやろうか」
「必要ないわ」
 冬和は苦笑した。

「いいの、それで?」
「いいの」
 久遠は理解しがたいといった様子で冬和を見る。

「復讐のために別れさせ屋を頼む人も多いんだよ。彼氏をとられたって」
「私の場合は飽きられたの」
「飽きる? お姉さんに?」
「多分ね。毎回そう。物足りないみたい。つきあっても楽しくないのよ」

 無関心が嫌だった、もっと感情を見せてほしい。
 そんなことを言い、表情がくるくる変わる女性と仲良くなる彼ら。
 最初は冷静さがいいとか落ち着きがいいとか言うくせに。冬和だって感情を見せているつもりだが、まったく足りないらしい。

「そいつら、わかってないね」
 久遠が言い、冬和は少し眉を上げた。
「オレならお姉さんに飽きることなんてないのに」
「お世辞でもうれしいわ」
 冬和が笑うと、久遠はうれしそうに目を細めた。
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