別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「こんなに笑顔が素敵だ。本を読む姿は知的だし、見知らぬ誰かをかばう優しさ、なのに名乗らずに帰っちゃう奥ゆかしさ。すべてが素敵だよ」
「褒めるのが上手ね」
「女性を喜ばせることはたいてい上手だよ」
「意味深ね」
 二人は顔を合わせてくすくす笑った。

「オレに恋をして綺麗になっていく人を見るのは好きだよ。生気がなく疲れた人が、どんどんキラキラしていくんだ。別れてもキラキラしていられるように気を付けて別れるんだよ」

「キラキラ、ねえ……」
「運命の恋をしたって思えたら、それだけで素敵な思い出にならない?」
「運命の恋とか愛とか、まやかしだもの」
 恋なんてガラスよりももろくて壊れやすく、運命の愛なんて蜃気楼のようだ。

「通じないなあ、お姉さんには」
「私を落としてもお金にならないでしょ」
「そうだね」
 久遠は苦笑した。

「お姉さんは男性不信……というより恋愛不信なのかな? どうして?」
「恋愛なんていつか終わるものだし。わかってるでしょ?」
「オレ、終わらせる側だもんね」
 彼は面白そうに言う。

「別れさせ屋よりホストかレンタル彼氏のほうがいいんじゃない?」
「嫌だな。どっちもめんどくさそう」
 冬和には似たように思えるが、なにか違うらしい。
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