別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「愛は贅沢品なのかな。日用品なのかな。必需品?」
 冬和が言うと、久遠は楽し気に首をかしげた。
「なくても生きていける、けどあったほうがいい。から贅沢品?」

「ないと生きてけないって人もいるけど」
「オレはお姉さんがいないと生きていけないから、お姉さんが必需品」
「そんなことばっかり」

 冬和は笑みを浮かべた。熱を含まない言葉が心地良かった。
 ぬるくて軽い時間。恋なんて熱くて重くて触れたくもない。

「またお姉さんに会いたいな。連絡先教えて?」
「私があなたに興味を持った瞬間、めんどくさくなるんでしょう?」

「……そうかも」
「連絡なんてとらないほうがいいわ。また偶然会ったらお茶しましょ」

「運命だよ」
 久遠がくすくす笑う。
 冬和は苦笑し、コーヒーを飲んだ。



 お会計は個別にしてもらった。
 先に冬和が済ませ、次に久遠が会計をしているときだった。
「あの……連絡ください」
 振り返ると、会計の女の子が顔を真っ赤にして紙切れを久遠に差し出していた。

 冬和はやや不快な自分に気が付いた。
 自分という連れの女がいるのに、連絡先を渡そうとするなんて。
 思って苦笑する。
 自分は彼より年上だ。姉かなにかだと思われたのだろう。
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