別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
 同時に恥ずかしくなった。恋人だと思われたかったのか、自分は。
「恋人がいるから」
 久遠が断る。
「でも、お姉さんって……」
 彼女の目が冬和を見る。

 久遠は答えなかった。
 冬和の手をとり、引っ張って店を出る。
 店の外に出ると、夜の空気が肌に気持ち良かった。

「彼女、きっとすごい勇気を出したのよ」
「どのみちあの人をふってたよ。オレにはあなたがいるから」

「私はお姉さんだもの」
「じゃあこれからは名前で呼ぶ。冬和って」

「呼び捨てなの?」
「嫌?」

「嫌よ」
「じゃあ、冬和さん」

「……妥協してあげるわ」
「妥協かあ。さみしいなあ」
 冬和は苦笑した。

「この店には二度と来られないわね」
「じゃ、冬和さんの家に行こう」

「恋人のところへ行きなさいよ」
「さっきのあれは冬和さんのことだよ」
「女性と住んでるんでしょ?」
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