別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「家は自分で探しなさい」
「冷たっ」
 久遠は肩をすくめた。
「この仕事、やめる?」
 麗美の言葉に、久遠は彼女を見た。

「なんで?」
「探し物が見つかったら必要ないんじゃない?」

「本当に見つかったのかな。っていうか、別れさせ屋ってやっぱり『悪』かな」
「見下される仕事ではあるわね。人の心を弄んでって」

「必要とする人がいるのに。ストーカーの気をひいてくれたから逃げられたって感謝されたりするじゃん」
「たいていは離婚のごたごた、自分勝手な理由も多いわ」

「そうだけど。人の役には立ってるよね。だけど……」
「嫌われたくないのね」

「そういうことになるのかな」
「それは成長かしら、後退かしら」
「どっちでもいいよ」
 そうね、と女社長は微笑した。

「今日は帰る。またね」
 言って、彼は事務所を出た。
 夜道を歩いて、思い出す。

 喫茶店にいる冬和を見て、なんだかうれしくなった。
 つい隣に座ったが、冬和が無関心に本を読んでいることにムッとしてしまった。
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