別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
 女と仲良くして見せても冬和は無関心で、彼が邪魔だと言わんばかりに店を出て行った。

 そんな扱いは初めてだった。たいていの女はちょっと仲良くなるとすぐ彼にのぼせ上がる。
 その状態でほかの女といるのを見ると、怒るか、泣く。正直、めんどくさい。

 だが。
 うすうす感じていた。
 その反応が見たくて女と一緒にいるのを見せているときがあった。

 めんどくさいのに、誰かに想われているのを感じると、ほっとした。
 だが、結局はその女との接触を断つ。そのほうが心を揺り動かされなくて済むから。

 拒絶の意志を見せてもしつこい女性もいる。
 それを愛と呼ぶのかもしれないが、まとわりついて四肢を拘束するようなそれに溺れる気にはなれなかった。

 間借りしていたマンションに帰る。
 また未波がリビングで待っていた。
 続くダイニングには食事が用意されてラップがかけられている。

「おかえり」
「だからさ、待つなよ」
「待ってないよ」
 未波は食事を冷蔵庫にしまった。

「最近、帰るの遅いね」
「友達とね」
「ただの友達?」
 久遠は不快さに目を細めた。

「そうだよ。男女を意識しなくていい人。すごく楽」
 直後、久遠はなにかに気がついたようにはっとする。
「……女の人なのね」
 未波は顔を暗くしてうつむき、久遠の様子にはまったく気が付かなかった。
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