別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
 彼女らはなんでこんなに自信をもって愛しているなんて言えるんだろう。愛なんていつか壊れるものなのに。浩之にいたっては、いくつもの愛を得ようとする。

 思って、自嘲する。
 そんなことを思う時点でもう負けているのかもしれない。
 自分が越えられない壁をひょいと越えていく彼女らはすごい。

 冬和はまたコーヒーを飲んだ。
 不自然な甘さが不快で、大きくため息をついた。



 始業後すぐ、冬和は課長に会議室に呼ばれた。
 向かい合わせに座った課長は、小難しい顔をして冬和に聞く。

「緒方さんと広瀬さんともめたんだって?」
「私は巻き込まれた立場だと認識しています」

「二人はそう言ってなかったけど」
 事実より多数決で決まるのか。だったら目撃者の証言を聞いたら誰が悪いことになるのだろう。

 経緯を聞かれたので二人のことを話した。給湯室の件は浩之のセクハラだ。だが、課長はそこに触れなかった。

「プライベートに口を出す気はないが、緒方さんと別れたんだろう? ここにいづらくないか?」
 冬和の眉がぴくっと動いた。

「異動、ですか?」
「その提案だよ」
「どうして私が?」
 トラブルを起こした二人ではなく、自分が遠ざけられるなんて。

「広瀬さんだと力不足だし、緒方さんだと求められている人材とは違うんだよ」
「異動は確定ですか?」
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