別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「君が入っていくのが見えて。話がしたいけど、俺も中に入ったらストーカーみたいだし」
 外で待ち伏せるのも充分ストーカーみたいだ。

 思って、気が付く。
 久遠に待ち伏せされてもまったく不快ではなかった。人懐こい笑みにごまかされていたのか、それとも――。

「広瀬さんとお幸せに」
 冬和は駅に向かって歩き出した。
 その手を浩之がつかむ。

「ちょっと頼みがあるんだ」
「聞く必要を感じない」

「課長に一言、言ってくれるだけでいいんだ」
「なにを」
「君が俺によりを戻したいって迫ったって」

 冬和は愕然とした。
 この男はとことん人をバカにしている。都合のいいようにだけ冬和を使おうとしている。

「冬和さん?」
 呼ぶ声にそちらを見ると、久遠がいた。
「オレの彼女なんだけど。手、離してくれる?」
 久遠が言う。

「なんだお前」
 浩之が久遠を威圧するように言うから、冬和はあきれた。杏奈が自分にからんで泣いていたときは隠れようとしていたくせに、年下の青年にはこんなに強気になるなんて。
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