別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「離して」
 冬和が腕を振ると、浩之はしぶしぶ手を離した。

「ごめんね、来るのが遅れて」
 久遠が言うから、冬和は話を合わせた。
「もう、帰ろうかと思っちゃった」
 すねたように言って、久遠の腕に自分の腕をからませる。
 久遠はふふっと笑った。いったん腕を離して冬和の肩を抱く。

「そういうつれないところも大好き。あなたのすべてが大好き」
 彼は浩之に挑発的に目を向けながら冬和の頬に口づける。

「ダメよ、こんなところで」
「いいじゃん」
 久遠は抱き寄せるように見せかけて、さりげなく冬和を浩之から遠ざける。

「お前ら、俺のことバカにしてんのか!」
「う……ん、そうかも」
 久遠はくすくすと笑う。

「こんな素敵な女性をふるなんて信じられない。あ、だからつきまとうのか。でもこれ以上はストーカーとして警察に届けるよ。そういうのってなぜか人に広まるから、会社でどういうことになるかなあ?」
 浩之はたじろぎ、冬和を見た。

「俺を警察に売るのか」
「そういうところ、ほんと無理。大嫌い」
 信じられない言葉を聞いたと言わんばかりに浩之は目を見開き、冬和を凝視する。

 冬和は嫌悪に目を細めた。
 あんなことをして嫌われないと、どうして思えるのか。
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