別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
 これまでの関係が壊れるのが嫌だった。
 つきあえば、いつか別れるのだ。ひととき幸せだったとしても、長続きはしない。

 ならば、始まらない方が良い。
 シュコシュコとシャンプーを出して頭を洗う。

 彼のほうがずっと年下だ。順当に進学した大学生なら高く見積もっても22歳。それでも自分より5歳も下だ。情熱的に恋をして燃え上がる年齢。きっと燃え尽きて冷めるのも早い。

 比べて、27歳の自分。おそらくは人と比べて恋に熱を持てない。同じ温度で恋ができないばかりか、彼が先に燃え尽きるだろう。そのときにまた泣くはめになるのはごめんだった。

 同時に、そんな理由で、と思う。
 彼は真剣に告白してくれたのに、自分勝手な理由で彼を拒絶してしまった。なんてひどい女だろう。

 ぽろっと涙があふれる。
 この涙は違う。
 冬和は自分に言い訳する。
 シャンプーが目に沁みたから。浩之との失恋の痛みが今さら深くなったから。きっとそうだから。

 できることなら。
 嗚咽を噛み殺しながら、冬和は思う。

 恋だの愛だのといった不自然で薄っぺらなものを挟まず一緒にいたかった。

 友情でもない、あたたかななにか。

 恋愛に不信感のある者同士。弱い獣が物陰にひそんで敵をやりすごすように、一緒にいるだけ。それだけでよかった。

 嗚咽が漏れるのを、止められなかった。
 目をぎゅっと閉じ、歯をくいしばるようにして、冬和はシャワーで頭を流した。
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