別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
 課長の思いがけない言葉に、胸は高鳴った。
 仕事をきちんと見てもらえていた。優秀な人として推薦したいって言ってもらえた。

「英語はできたよね?」
「ちょっとした会話程度でしたら」
「じゃ、勉強してもらう必要があるかも。——それと、緒方さんと広瀬さんには厳重に注意しておいたから。特にセクハラした緒方さん。次は懲戒処分だって言ってある」
「ありがとうございます」
 ちゃんと対応してくれていた。冬和はほっとした。

 だから昨夜も絡まれたのかと納得した。冬和のせいにして課長の印象を挽回したかったのだろう。

 昨夜のことを言おうか迷って、やめた。あの様子では、もうちょっかいを出してこないだろう。過剰に追い詰めたら、それこそなにをされるかわからない。

 冬和は頭を下げて、会議室を出た。



 会議室を出ると会社の電話が鳴り、同僚がとった。
 しばらくして、冬和の名が呼ばれた。
「百合宮さん、外線1番に茜山総合病院から」
「ありがとうございます」
 冬和は首をかしげた。病院からかかってくる用事などないはずだ。

「お電話変わりました、百合宮です」
 相手は看護師だと言い、電話の用件を告げる。
 冬和は愕然として時計を見た。あと10分で定時だ。

「会社が終わったすぐ行きますので!」
 冬和は病院の場所を確認した。
 定時になると慌てて会社を飛び出した。
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