別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
冬和は急いで茜山総合病院へ向かった。
マナーを気にする余裕もなく廊下を走り、電話で聞いた病室に飛び込む。
目当ての人物はのんびりとスマホを見ていて、冬和に気づくとにこっと笑った。
「来てくれたんだ」
久遠はうれしそうに言った。
「刺されたって……」
「大丈夫。ちょっと腕を縫ったけどさ」
そう言って包帯が巻かれた左腕を上げた。
冬和はほうっと長く息を吐いた。
電話があってから、気が気ではなかった。腕を切っただけだと聞いていたが、刺されるなんて普通に生活していれば遭遇する事件ではない。
「なにがあったの?」
「ルームメイトが……さ」
「女性よね」
冬和はあきれたようにため息をついた。
「体の関係はないよ。恋愛も……ないと思ってたんだけど違ったみたい」
「それで?」
「彼女、自殺しようとしたんだ。オレが出て行くなら死ぬって。止めようとしてもみあいになって。だから事故だよ」
「彼女は無事なの?」
「うん。オレがケガしたって半狂乱になってたけど、精神科で見てもらって、親御さんが迎えにきたから」
「もめたでしょ」
「それなりに」
目をそらして久遠が言う。