別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「ちょっと!」
「来てくれてうれしい」
 仰向けになった冬和に覆い被さるように、久遠は彼女を抱きしめる。

「もう会えないかと思った」
 彼の吐息が首筋にかかる。
「離して」
「やだ」
 久遠はなおさらぎゅっと抱きしめる。

「オレが探してたものは、きっとあなただから」
「職業病が出てるわよ」
「前も言ったけど仕事は辞めたから。あなたのためならなんだってする」
「意外に重いこと言うのね」

「女性が喜ぶ言葉だと思うけど、あなたが喜ばないなら意味ないなあ」
 久遠はくすくすと笑う。

「薄情だなんて嘘だ。こんなに急いで駆けつけてくれて」
 久遠の細めた目が愛し気に冬和を見る。

 彼の手が冬和の頬に添えられ、顔が近付いてくる。
 冬和は目を閉じた。
 唇が触れようとしたそのとき。

「なにをしている」
 男の冷たい声が響いて、久遠の腕が離れた。
「親父!」
 久遠が言う。
 冬和は慌てて体勢を直した。
 恥ずかしいところを見られてしまった。
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