別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
 そう思ってうつむくと、つかつかと男性が近寄ってきた。
 60近い男性だった。
 背の高い白髪頭だった。面立ちがなんとなく久遠と似ていた。

「もう息子には近寄らないでいただこう」
「いきなりなに言ってるんだよ!」
 久遠が抗議する。

「害になる女をそばには置いておけないからな」
 男性は彼に似た瞳で冬和を睥睨(へいげい)する。
 冬和は唖然とした。はっきり、害と言われた。

「ミソノ商事の社長の息子だからって、嫁に来たところでぜいたくできるわけじゃないぞ」
 続いた男性の言葉に、さらに冬和は驚いた。

 ミソノ商事の社長の息子。
 ということは。
 冬和は久遠を見る。
 彼は本当に御曹司だったんだ。

「その人は違う!」
「もう来ないから大丈夫です」
 言い捨てて、冬和は病室を飛び出した。

 自分が彼とお似合いだとは思わなかった。
 だけど、心に格差はないはずだ。

 だけど。
 これだから。

 冬和はじわりとにじむものを無視して、歩き続ける。
 これだから、愛だの恋だのは嫌いだ。そんなものがあるから傷つく。
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