別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「最後にキス、してくれる?」
「最後なんて言うなら、嫌だ」
「わかった」
 冬和は手を下ろし、歩き始める。
 その手を、久遠がつかむ。

「なにするの」
 ふりむいた冬和の唇に、久遠の唇が重なった。

 至近距離の彼に、見ていられなくて目を閉じた。
 久遠は片手で冬和を抱き、片手で頬を押さえて荒々しく唇をむさぼる。

 冬和ののどから声が漏れる。
 乱暴で強引なキスなのに、甘いものが潜んでいて彼女の心をかき乱す。
 やっと唇を離した彼は、熱いまなざしで冬和を見つめた。

「抱きたい。今すぐ」
 久遠はまた唇を重ねようとして、冬和は手でそれを制した。

「別れさせ屋にお願いがあるの」
 冬和の言葉に、久遠は真顔で彼女を見る。

「私を御園久遠と別れさせて」
「どういう意味」
 冬和は憂いを帯びた笑みを浮かべる。

「……いい。オレの好きなように解釈する」
 久遠は彼女の手を引き、タクシーに手を上げる。
 久遠に引っ張られ、冬和は一緒に乗った。

 行った先は久遠が泊るラグジュアリーで人気のホテル。
 部屋に入るなり、久遠はまた冬和の唇を奪った。
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