別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
4 運命



 一カ月後。
 冬和はニューヨークにいた。
 初めての海外だった。
 右も左もわからず、たどたどしい英語でなんとか日常を過ごす。

 騙された、と課長を恨む。
 情報を小出しにして様子を見ながら冬和の気持ちを転勤に向けさせ、とどめは褒め殺しだった。

 君ならできるから。営業事務にしておくのが惜しい人材だからさ。これを足掛かりにしてもっと活躍してよ。

 そう言われて舞い上がった当時の自分に一時間……いや、一日くらい説教をかましたい。プライベートでは劇的にへこんでいたから、課長の言葉が心底うれしかったのだ。だからアメリカ行きを了承してしまった。

 結局、営業をやらされている。営業事務だったならだいたいわかるでしょ、と暴論とも言える理由で初日からこき使われている。

 向こうの課長からすごい人材だって言われたよ、とこちらの上司に言われて震えあがった。その期待に応えることはできるだろうか。

 こちらの社では半分が日本人で半分が現地採用だった。英語での通常のコミュニケーションにすら必死だ。
 仕事もそうだが、街にもまだ馴染めていない。
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