別れさせ屋は恋愛不信な彼女との運命の愛を離さない
「ちゃんとお願いしたわ。あなたと別れさせてって」
「別れさせ屋はやめたんだから、依頼は無効」
「あのときはそんなこと言わなかったじゃない!」
「そもそもつきあってなかったし」
 久遠はするりと彼女を抱きしめる。

「捕まえた。二度と離さない」
「離して」
「嫌。ダメ」
 言って、彼は冬和の額にキスを落とす。

「私はあなたのこと好きじゃないの!」
「大丈夫。オレ、女性を落とすの得意だから」
 耳元でささやかれ、冬和はがくりとうなだれた。

「……わかった。降参」
「早過ぎない? ほんとに?」
「本当に」
 冬和はため息交じりに答えた。

 実際のところ、久遠を思い出さない日などなかった。
 遠く離れ、忙しい日常を過ごせば忘れられるかと思ったのに、ことあるごとに久遠を思い出すだけだった。

「まさかこんなところまできて待ち伏せなんて」
「ちょうどよかった。あなたが見てこいって言った、外の世界を見られるんだから」
 久遠はにっこりと笑う。

「今日は再会を祝して、一緒にご飯食べよ。そのあとは……今夜は帰さないから」
「嫌よ、帰るわ」
「じゃあ、あなたの部屋で」
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