夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
侵入捜査
そして、気が付けば今年も終わりに近付く季節になる。
今週の金曜日は、真壁が久しぶりにクラブにホストとして出るらしいと、真那斗から情報を得る。
これは一度行って、この目で真壁の接客を見てみなければと、由亜は心に強く決める。
そして今夜、『colors』の仕事を休みわざわざ変装してやって来た。
変装といってもメガネ姿も、ゆるふわ姿も真壁に見せてしまっているから、今回はショートヘアのウィッグを被り、白い膝丈のコートを羽織り、黒のショートパンツにロングブーツというイケイケ女子に変装した。
これは京香がホスト通いしていた頃の服を借りたのだけど…。足元が多少スースーするが、これでバレる事はないだろう。
目にはカラーコンタクトも入れたし、メイクだってプロに任せた。いざ出陣というがごとくに、威勢よく家を出できたのだ。
だけど…
当の京香は『もういいわ…由亜には到底敵討ちなんて無理よ。』と何度となく由亜を止めた。
それでも悔しい思いを胸に、負けなくないと被りを振って、京香が静止める手を半ば強引に振り解きやって来たのだ。
そこは『colors』と同じビルの一角だった。一階から階段を降りた地下にその店は入っていた。
『BLACK LABEL』と言う名のホストクラブで、こちらの入口は『colors』とは反対側に位置していた。
良かった…。
入口の警備員や、エレベーターボーイの純君に会ったら、きっと声でばれてしまっていた。
ホッとしながら地下への階段を降り、黒い扉の前まで辿り着く。
「いらっしゃいませ。初めてのお客様ですか?」
と、入口にいる物腰柔らかい、子犬系男子が笑顔でお出迎えしてくれた。
緊張でガチガチだった心が少し解される。
身分証明と審査を得てカバンを預けて、無事にフロアに通された。
始めて入るホストクラブは煌びやかで、最上階の『colors』よりも、より黒を基調としたシックな雰囲気を醸し出していた。
「こんばんは。一樹でーす。隣り失礼しまーす。」
由亜が席に座るなり、元気な男子がやって来る。
「…こんばんは…。」
男性に苦手意識のある由亜のもっとも苦手なタイプだと思い、若干引き気味になる。
「初めてですよね。ここのお店の料金システムをとりあえず、教えておきますねー。」
チャラそうなのに意外としっかりしていて、分かりやすく教えてくれる。
「あの…例えば誰か指名したい時って、ランクに寄って指名料が変わるんですか?」
由亜は初心者らしく素朴な疑問を投げかける。
「やっぱ、No.1.2.3は大人気だから、指名料はさすがに高いよ。ちなみにオレは指名料なしのペイペイなんでだいじょーぶです。」
元気に頭の上に手でマルを作って主張してくる。
黒色のファイルを手渡され、開くとホストの顔写真の下に指名料金が明確に書いてあった。
さすがクリーンな経営を目指す真壁らしいなと、妙に由亜は納得した。
「何かお飲みものでもどうっすか?」
一樹がそう声をかけてくる。
「ノンアルコールとか…ありませんか?」
あまりお酒に強くない由亜は、ここは酔わないようにと用心する。
「もちろんありまーす。」
空回りくらい元気な返事で、一樹は答えて注文してくれた。
このノリがしばらく続くのか…ちょっとキツイな。
由亜は愛想笑いしながら、一樹の接客に身を委ねるしかい。
由亜の注文したノンアルコールが運ばれて来ると、一樹が突然、手相占いをし始める。
「これが生命線で…京ちゃん長生き出来るよ!多分80歳までは健在、後これが頭脳線で…。」
名前を聞かれた際に、咄嗟に京ちゃんの名を出してしまった事に、罪悪感を抱きながら、甘んじてベタベタ手を触れてくる一樹の接待を受け続ける。
由亜はあまり興味の無い手相占いに、適当に相槌を打ちながら、こっそりと店内の様子を観察する。
今週の金曜日は、真壁が久しぶりにクラブにホストとして出るらしいと、真那斗から情報を得る。
これは一度行って、この目で真壁の接客を見てみなければと、由亜は心に強く決める。
そして今夜、『colors』の仕事を休みわざわざ変装してやって来た。
変装といってもメガネ姿も、ゆるふわ姿も真壁に見せてしまっているから、今回はショートヘアのウィッグを被り、白い膝丈のコートを羽織り、黒のショートパンツにロングブーツというイケイケ女子に変装した。
これは京香がホスト通いしていた頃の服を借りたのだけど…。足元が多少スースーするが、これでバレる事はないだろう。
目にはカラーコンタクトも入れたし、メイクだってプロに任せた。いざ出陣というがごとくに、威勢よく家を出できたのだ。
だけど…
当の京香は『もういいわ…由亜には到底敵討ちなんて無理よ。』と何度となく由亜を止めた。
それでも悔しい思いを胸に、負けなくないと被りを振って、京香が静止める手を半ば強引に振り解きやって来たのだ。
そこは『colors』と同じビルの一角だった。一階から階段を降りた地下にその店は入っていた。
『BLACK LABEL』と言う名のホストクラブで、こちらの入口は『colors』とは反対側に位置していた。
良かった…。
入口の警備員や、エレベーターボーイの純君に会ったら、きっと声でばれてしまっていた。
ホッとしながら地下への階段を降り、黒い扉の前まで辿り着く。
「いらっしゃいませ。初めてのお客様ですか?」
と、入口にいる物腰柔らかい、子犬系男子が笑顔でお出迎えしてくれた。
緊張でガチガチだった心が少し解される。
身分証明と審査を得てカバンを預けて、無事にフロアに通された。
始めて入るホストクラブは煌びやかで、最上階の『colors』よりも、より黒を基調としたシックな雰囲気を醸し出していた。
「こんばんは。一樹でーす。隣り失礼しまーす。」
由亜が席に座るなり、元気な男子がやって来る。
「…こんばんは…。」
男性に苦手意識のある由亜のもっとも苦手なタイプだと思い、若干引き気味になる。
「初めてですよね。ここのお店の料金システムをとりあえず、教えておきますねー。」
チャラそうなのに意外としっかりしていて、分かりやすく教えてくれる。
「あの…例えば誰か指名したい時って、ランクに寄って指名料が変わるんですか?」
由亜は初心者らしく素朴な疑問を投げかける。
「やっぱ、No.1.2.3は大人気だから、指名料はさすがに高いよ。ちなみにオレは指名料なしのペイペイなんでだいじょーぶです。」
元気に頭の上に手でマルを作って主張してくる。
黒色のファイルを手渡され、開くとホストの顔写真の下に指名料金が明確に書いてあった。
さすがクリーンな経営を目指す真壁らしいなと、妙に由亜は納得した。
「何かお飲みものでもどうっすか?」
一樹がそう声をかけてくる。
「ノンアルコールとか…ありませんか?」
あまりお酒に強くない由亜は、ここは酔わないようにと用心する。
「もちろんありまーす。」
空回りくらい元気な返事で、一樹は答えて注文してくれた。
このノリがしばらく続くのか…ちょっとキツイな。
由亜は愛想笑いしながら、一樹の接客に身を委ねるしかい。
由亜の注文したノンアルコールが運ばれて来ると、一樹が突然、手相占いをし始める。
「これが生命線で…京ちゃん長生き出来るよ!多分80歳までは健在、後これが頭脳線で…。」
名前を聞かれた際に、咄嗟に京ちゃんの名を出してしまった事に、罪悪感を抱きながら、甘んじてベタベタ手を触れてくる一樹の接待を受け続ける。
由亜はあまり興味の無い手相占いに、適当に相槌を打ちながら、こっそりと店内の様子を観察する。