夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
真壁から聞く話は、京ちゃんからとは全然違って、血の通った温かいものだった。

「京香の事は今でも、どうすれば良かったか分からない。いっそ愛想尽きてくれた方が良いと、冷たくあしらって、ワザと嫌われる様に仕向けたところもある。」

そこまで話した真壁はしばらく私の手を握り、私の反応を伺うようにじっと見てくる。

「あの…京ちゃんは…出禁になった後…鬱になって自殺未遂やいろいろあって…。
私にとって京ちゃんは家族みたいな大切な人で…どうしても助けたくて…。」
ワーッと今まで溜め込んでいた感情が、一気に湧き上がって押し寄せてしまう。

涙が後から後から出て来て止まらない。

「少し…抱きしめるぞ。」
そう言われたかと思うと、引き寄せられて膝の上に乗せられ、ぎゅっと抱きしめられる。

「ごめんなさい…なかなか言い出せなくて…私、ずっと…オーナーの事…仇だと思ってて…。」

ヒックヒック…と肩を震わせて泣きじゃくる私の髪を、優しく撫ぜて慰めてくれる。

「辛い思いをさせて悪かった…。責められて突然の事をした、俺に全て責任がある。」

真壁が『悪かった、俺が悪い』と何度も私に謝ってくる。

今なら分かる…

悪いのは彼だけじゃない。
だってホストクラブは疑似恋愛を楽しむ場所なのだから、それを忘れて、本気になってしまった京ちゃんだって非がある筈…。

それから…ここ何年か分の涙を流し、私は疲れ果てていつの間にか意識を手放してしまった…。
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