夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした

だから5年以上経った今、彼女が突然俺の目の前に現れて内心とても驚いた。

大人になった彼女は、あの頃よりも綺麗で愛らしい女性になっていた。

打てば響く鉄のように憎まれ口を叩くのも、反抗的な眼差しも、本来の彼女を垣間見れた気がして嬉しかった。
だけど、昔より表情の薄い…何か影のある伏目がちな感じがとても気になった。

何のためにこんな場所に来たんだろうと、綺麗な彼女の心が、このくすんだ世界に飲み込まれないように、出来れば俺がこの手で守りたいと思うようになっていった。

会うたびに、いろいろな顔を見せてくれる由亜とのひと時は、俺の需要強壮の栄養ドリンクのような存在になる。

好きだと認識したのはいつだろうか…。

ああ…そうだ。
エレベーターボーイの純と仲良く話している姿を見た時、嫉妬のようなドス黒い気持ちが芽生えたんだ。

純と話している時の由亜の、屈託なく笑う笑顔は昔のままで、その頭になんの躊躇なく触れる純に嫉妬した。

俺にもその笑顔を見せて欲しいと思った時、俺は完全に由亜に落ちていると感じた。

もっと彼女に近付きたいと思っているのに、近付けば近付くほど、警戒心を露わにしてくる彼女が、俺を見る目が他と明らかに違うのを感じた。

言うならば威嚇する野良猫のように、一歩近付けば一歩離れてしまうような、縮まらない距離がもどかしく感じられた。

だけど、下手に触れたら途端に消えてしまいそうで、怖くてそれ以上近付く事が出来なくなった。
それぐらい俺にとって、大切な存在になっていた。

だから…
ホストクラブで彼女を見つけた時、雷に撃たれたような衝撃を覚えた。

不安感、焦燥感、苛立ち焦り、いろんな感情が一気に押し寄せて、俺の頭はショートした。

咄嗟に彼女をその場から遠ざけ、怒りとも似た感情で強引に連れ出し咎めた時、涙する彼女を見てハッと我に戻った。

溢れ出す庇護力、正義感、嫉妬、独占欲…今まで押さえ込んでいた、気持ちを制御する事が出来なくなった。

言葉にしてしまってからは、愛しさで頭が一杯になる。
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