夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
真壁はそう言って、不意に指と指を絡ませて恋人繋ぎをしてくるから、由亜の心臓がドキッと跳ねる。

「俺は本気だから、由亜も本気で俺の事を考えろ。」
いいな。と念を推して来る。
由亜はドギマギしながらも、こくんと小さく頷く。

この人はホスト界のNo.1で、言わば恋愛のブロなのだ。恋愛なんて程遠い所にいた私が立ち向かえる筈がない…。

それに…京ちゃんの好きな人だったのだから、今だってきっと未練はあるはず…。
 
由亜はそう思うと、なかなか一歩を踏み出す勇気が出ない。

真壁の車で会社までは10分もかからなかった。

「近い…ですね。
ありがとうございました。また、近いうちにブーツを取りに伺います。メガネは今夜職場でお返しします。あと…。」
由亜が洋服は洗って返すと言おうと思うと、真壁に遮られる。
「服も靴もついでにメガネも全部お前のだから、返されても困る。」

「えっ、買取なんですか⁉︎お、お幾らでしたか?」
慌ててお財布を出そうとすると手を握られて、

「男には貢がれておくもんだ。今後一切、俺の前で財布出すなよ。怒るぞ。」
目を細めて睨まれるから、

「すいません…あ、ありがとう、ございます。」
と、素直にお礼を口にする。

宜しいと、言うように頭をポンポンされて、わざわざ外に出て助手席のドアを開けに来てくれる。

それだけでドキドキしてしまうのは、初心者だからだろうか…差し出された手に捕まりながら車を降りる。

「ありがとうございます。…行って来ます。」

「帰りは迎えに来れないけど、気を付けて来いよ。」
真壁はそう言って運転席に戻って帰って行った。
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