夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
そのタイミングで、由亜のスマホが鳴る。
びっくりして着信を見ると真壁翔の名が…
またびっくりして、慌てて部屋へと駆け込み電話に出る。

確かに今朝、連絡先を交換したが、用も無いのに連絡が来る事は無いと思っていたから、それだけで心臓はばくばくだ。

「も、もしもし…。」

『何…驚いてる?…平気か?』
平気か…とは?
由亜は頭の中にはてなマークを浮かべながら、

「平気、ですよ?突然スマホが鳴ってびっくりはしましたけど。」

『お前が…京香に叱られてるんじゃないかって心配になったんだ。無断外泊してる訳だし…』

「えっ…。あっ、大丈夫です。特に昨夜の事は咎められなかったので…。それよりまだ、これからお仕事ですよね?時間大丈夫なんですか?」

金曜日の夜のお店は忙しいはずだ、私の事で時間を割かせるのは申し訳ないと思ってしまう。

『オーナーの仕事は時間に制限は無いから大丈夫だ。店の見回りとトラブル処理くらいだから、気にするな。それより体調は大丈夫なのか?早く寝て身体を温めた方がいい。』

「お薬が効いたみたいです。今は大丈夫です…。」

『なぁ…明日、暇か?』

「へっ⁉︎明日ですか?特に何も無い…ですけど?」

『明日…少しでも会えないか?』
珍しく、翔の不安げな声を聞く。

それは…どう言う事だろう?
土日は夜の勤務も休みだし、特に用事はないのだけれど…
由亜は少し考える。

『…俺がお前に会いたいんだよ。由亜の時間を少しでもくれないか?』

なかなか返事をしない由亜に痺れを切らしたように、翔が少しキレ気味に言ってくる。

「午後からだったら…大丈夫ですけど…。」

『どこか…行きたい所は?』
矢継ぎ早にそう聞かれる。

「私が行きたい所ですか⁉︎…特には…直ぐには思いつきません。」

『…じゃあ、欲しい物とか、食べたい物とか…。』
そう話してる後ろから、『オーナーすいません。』と誰かが話しかける声が聞こえて来る。

翔はチッと舌打ちをして、
『とりあえず、行きたいところ決めてメールしろ。』 とぶっきらぼうにそう言って『じゃあな。』と通話が切れる。

何だったのだろう?由亜は頭を傾けながら、しばらく何が起きたのか理解出来なかった。
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