夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
風は冷たいけど今日は良い天気。
車窓からの景色も何処となくキラキラと輝いて見える。
「今からどこに行くんですか?」

「ドライブでもしようかと思ってるけど、体調は大丈夫か?冷えるようなら暖房温度上げるけど?」
翔さんは、昨夜バイトを早退したからか体調を心配してくれる。

「お薬も持参しましたし、大丈夫です。」

「なら良いが…少しでも不調なら直ぐ言えよ。辛い時ほど大丈夫だって言いそうだから、由亜の大丈夫は信じない事にする。」

にこりと笑った翔さんに、いちいちドキンとしてしまう。
「翔さんて…お父さんみたいに心配症ですね。」

「それは…老けて見えるっていう嫌味か?」

「ち、違いますよ。細かいとこまで心配してくれるので、感心してるんです。」

「お前にだけだけどな…。
正直言って、お前意外に興味は無いしどうでもいい。
ちなみに3つ上なだけだから、お父さんとか言われると地味に傷付くからやめてくれ。」
本当に嫌そうな顔をするから、クスッと笑ってしまう。

「えっ…待って、28歳なんですか⁉︎
オーナーだからきっと30は超えてるんだと…勝手に思ってしまってました。」

「20代で悪かったな。前オーナーにたまたま場所を譲渡してもらっただけだ。運が良かったに過ぎない。」
それから、翔さんがどのような経緯でオーナーになったのか教えてくれた。

大学の学費を稼ぐ為に、20歳からバイト感覚でホストを始めた事。1年後にはその店のNo.1になった事。先代のオーナーが大病をして、一線を退く際に、譲り受けた事。 
きっと誰もが知らないであろう翔さんの貴重な話しを聞く。

京ちゃんも多分、彼が28歳だとは知らない筈…。
だって京ちゃんは…年下は恋愛対象外だって聞いた事があるから。

「京ちゃんって何歳か知ってますか?」
不意に気になり聞いてみる。

「さぁ、知らないな。一度誕生日を店で祝った事があったが…興味が無かったから覚えてない。」
ホストNo.1だと謳っている人が、そんな事で良いのだろうかと心配になるけど…

「京ちゃんは、今年30になりました。年上だって知ってましたか?」

「いや、客が年上だろうが、たとえ元男だろうが…
いちいち気にはしない。それが商売だから。」
そう言って、気にも止めない風にサラッと流される。
< 38 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop