夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
「なんか言えよ…。俺が全部曝け出したんだぞ。」
少しキレ気味に翔さんが言ってくる。

「あの…ちょっとびっくりしちゃって…。そんな前に知り合ってたなんて。」

「引いたか…?」
不貞腐れたようにそう言う翔さんが、少し可愛いと思ってしまう。

「全然…前よりなんだか距離が近くなった気がしてます。」
笑顔でそう答えると、心底ホッとしたように笑顔を向けて、
「良かった…。」
と言った。

そんな会話を繰り返しながら、車はいつの間にか目的地に到着していた。

気づけば、車窓からキラキラと眩しい海が見えてくる。
「ここはどこですか?」
あまり遠出をした事が無い私は、ここが何処なのか分からない。

「鎌倉だ。来たことないか?」

「始めて来ました。海が綺麗…。」
デートなんて初めてだし、旅行さえも学校で行った事ぐらいしか無いから、観光地には無縁の人生だった。

なんだかワクワクと気持ちが上がる。
「鎌倉と言えば大仏ですよね?観てみたいです。」

私が珍しく自分の気持ちを曝け出すから、翔さんも嬉しそうに、
「それなら、外に出てみるか。」
と、鎌倉を散策する事になる。

冬の鎌倉は思っていた以上に寒かったけど、2人の距離が近くなったせいか、不思議と心は暖かく楽しく過ごす事が出来た。
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