夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
「今…真那斗来てなかったか?」
入って来て早々、翔がそう聞いてくるから、

「前借りの件で来ただけですよ。」
と、由亜は何気なさを装って翔に伝える。

「まぁ…いい。帰れるか?」

「あと…5分あります。ちょっとお待ち下さい。」
時計を見ながら律義に由亜がそう言うから、

仕方なく翔は由亜の隣に座り、手持ち無沙汰になりながら5分を待つ我慢を強いられる。

「…翔さん…いつも助けてもらってばかりで、ありがとうございます。何かお手伝いが出来る事があったら何でもやりますから言って下さい。」
片付けをする手を止めて、そう言ってくる。

翔はそんな彼女を見やり、まだ嫌われては無いみたいだと、ホッと肩を撫で下ろす。さっきまで奈落の底に落とされたかのような絶望感が、フワッと彼女の一言で浮き上がる。

そして、嫌われないよう、信頼を得るためこれまで以上に慎重に接しなければと心に決める。
< 49 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop