夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
その日から1週間ほど翔の送迎は続いた。
18時前に会社の側まで迎えに来て、帰りは10時半に家まで送ってくれるから、申し訳なくて由亜はなんだか肩身が狭い。
金曜日、家までの道中に翔に提案してみる。
「翔さん、来週からは電車で通いますから…。これじゃ、翔さんの貴重な時間の無駄遣いになっちゃいます。」
運転しながら翔は、ハハっと可笑しそうに笑い、
「俺は、逆に由亜との貴重な時間を過ごせて満足してる。何の苦も無いから気にするな。」
でも…と、由亜は思う。
このままでは、申し訳なさが積もりに積もって息苦しくなってしまう。
それにいよいよ明日、翔と京香が会うと聞いている。もしかしたら、このバイトだって京香によって強制的に辞めさせられるかもしれない…。
退職届けも出したままだから、きっと簡単に首は切られるだろう。不安と後悔が押し寄せる。
「週末は…京ちゃんと会うんですよね?」
「ああ、昼の1時にホテルのロビーで会う事になっている。由亜も気になるだろうし、暇ならうちに来て帰りを待っていてくれてもいいが?」
揶揄ってるのか本気なのかよく分からないけど、翔がそう言ってくる。
「ええっ⁉︎それは、ちょっと…心情的に無理です。」
1人でソワソワ待っているのも嫌だけど、まして翔の家に帰りを待つなんて…とてもじゃないけど心臓に悪いと、由亜は思う。
「じゃあ、日曜日は?」
由亜だって会いたい気持ちはあるにはある。
それに京香からよりも、翔から事の一部始終を聞いた方が、より真実だろうと言う事も分かる。
ただ…京香に後ろめたい気持ちのままで、翔に会うのは気が引ける。だけど、せっかくの誘いを無碍には出来ないし、日頃のお礼もしたい。
頭の中でいろいろな葛藤が巻き起こり、なかなか答えを出せないでいる由亜を見兼ねて、
「考え過ぎると1番大事な事を見失うぞ。この言葉、先代のオーナーから言われたんだ。あまり考え過ぎるな。自分の思うがままシンプルに考えるべきだ。」
翔が優しく由亜を諭す。
「シンプルに…。」
自分が今1番望む事… それは翔への日頃の恩返し。
「私…翔さんに、日頃のお礼がしたいんです。
お料理とかどうですか?私に出来る事ってそれぐらいしかないので…。」
呟くようにそう言うと、
「それは、俺の家に来てくれるって事?」
翔の声で、我に帰る。
「あっ…いえ、それは…駄目ですね。そう言うは…恋人同士でも無いのに…。」
自分の失言に気付き由亜は慌てる。
「仮にも、お前を好きだと言ってる男に、その言葉はどうかと思うが…地味に傷付く。」
ハァーとため息まで吐くから、急いで由亜は謝る。
「えっ?あっ…ご、ごめんなさい。あの…私、考え無しに言っちゃって…。」
本当に…何を言ってるんだろ、私…。
…それでなくても返事を保留にしたままの曖昧な関係なのに、家に行ってご飯を作ろうなんて…図々しい事この上ない。
自分の恋愛偏差値の低さに頭をもたげる。
「いっそ、試しに付き合ってみるか?
由亜の返事を待っていたらいつになるか分からない。この曖昧なままの関係も、はたから見たら良くないだろ。」
突然、サクッと翔が簡単に言ってのける。
18時前に会社の側まで迎えに来て、帰りは10時半に家まで送ってくれるから、申し訳なくて由亜はなんだか肩身が狭い。
金曜日、家までの道中に翔に提案してみる。
「翔さん、来週からは電車で通いますから…。これじゃ、翔さんの貴重な時間の無駄遣いになっちゃいます。」
運転しながら翔は、ハハっと可笑しそうに笑い、
「俺は、逆に由亜との貴重な時間を過ごせて満足してる。何の苦も無いから気にするな。」
でも…と、由亜は思う。
このままでは、申し訳なさが積もりに積もって息苦しくなってしまう。
それにいよいよ明日、翔と京香が会うと聞いている。もしかしたら、このバイトだって京香によって強制的に辞めさせられるかもしれない…。
退職届けも出したままだから、きっと簡単に首は切られるだろう。不安と後悔が押し寄せる。
「週末は…京ちゃんと会うんですよね?」
「ああ、昼の1時にホテルのロビーで会う事になっている。由亜も気になるだろうし、暇ならうちに来て帰りを待っていてくれてもいいが?」
揶揄ってるのか本気なのかよく分からないけど、翔がそう言ってくる。
「ええっ⁉︎それは、ちょっと…心情的に無理です。」
1人でソワソワ待っているのも嫌だけど、まして翔の家に帰りを待つなんて…とてもじゃないけど心臓に悪いと、由亜は思う。
「じゃあ、日曜日は?」
由亜だって会いたい気持ちはあるにはある。
それに京香からよりも、翔から事の一部始終を聞いた方が、より真実だろうと言う事も分かる。
ただ…京香に後ろめたい気持ちのままで、翔に会うのは気が引ける。だけど、せっかくの誘いを無碍には出来ないし、日頃のお礼もしたい。
頭の中でいろいろな葛藤が巻き起こり、なかなか答えを出せないでいる由亜を見兼ねて、
「考え過ぎると1番大事な事を見失うぞ。この言葉、先代のオーナーから言われたんだ。あまり考え過ぎるな。自分の思うがままシンプルに考えるべきだ。」
翔が優しく由亜を諭す。
「シンプルに…。」
自分が今1番望む事… それは翔への日頃の恩返し。
「私…翔さんに、日頃のお礼がしたいんです。
お料理とかどうですか?私に出来る事ってそれぐらいしかないので…。」
呟くようにそう言うと、
「それは、俺の家に来てくれるって事?」
翔の声で、我に帰る。
「あっ…いえ、それは…駄目ですね。そう言うは…恋人同士でも無いのに…。」
自分の失言に気付き由亜は慌てる。
「仮にも、お前を好きだと言ってる男に、その言葉はどうかと思うが…地味に傷付く。」
ハァーとため息まで吐くから、急いで由亜は謝る。
「えっ?あっ…ご、ごめんなさい。あの…私、考え無しに言っちゃって…。」
本当に…何を言ってるんだろ、私…。
…それでなくても返事を保留にしたままの曖昧な関係なのに、家に行ってご飯を作ろうなんて…図々しい事この上ない。
自分の恋愛偏差値の低さに頭をもたげる。
「いっそ、試しに付き合ってみるか?
由亜の返事を待っていたらいつになるか分からない。この曖昧なままの関係も、はたから見たら良くないだろ。」
突然、サクッと翔が簡単に言ってのける。