夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
「えっ⁉︎でも…
京ちゃんの事もありますし…それは、道徳的にどうかと…。」
由亜の頭はまた混乱し始めて、既にいっぱいいっぱいだ。
「道徳的にどうかと問われれば、俺達の関係の何処にやましいとこがある?」
翔から見たら、こんなにも清い関係のどこに非があるのだろうと思うから、由亜の発言は理解不能だ。
それに、京香とは元カノでも無ければただの元客なのだから。後ろめたい気持ちなんてこれっぽっちも無い。
ただ、由亜の心情を慮って今に至るだけで、本当はもっと積極的に口説きたいし、早く大手を振って街中を一緒に歩ける仲になりたいのだ。
だけど由亜の痴漢騒ぎで、前にも増して慎重にならざる負えないし、指一本触れる事が出来ないでいるのが現状だ。
この俺が…とまでは言わないが、以前の俺を知る奴等から見たら笑い草だろうなと思う。
いつからこんなに臆病になったのかと、翔は自分自身に呆れてため息を吐く。
「そうだな…。
とりあえず…京香に会って俺の罪を償わない限り、由亜の心は手に入らないって事だけは分かった。」
全ては明日の話し合い次第だ。
だけど、赤信号で車が停車したタイミングで、何を決心したのか突然沈黙を破って由亜が言う。
「…日曜日…お料理を作りに行ってもいいですか…?」
驚きを隠せない翔はつい目を見開いて凝視してしまう。
「ありがとう…これで明日も乗り切れそうだ。」
満面の笑みを浮かべた翔は、由亜には眩し過ぎると思うけど、シンプルにお返しが出来たら嬉しいと思った。