夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
「病人に手荒な事をして悪かった。」
翔はベッドに由亜を寝かし額に手を置き熱を測る。
「風邪…移っちゃいませんか…?」
先程の一部始終を振り返り、ボッと赤くなりながら由亜は翔の顔を見つめる。
「むしろ移りたくてしてるんだ。その方が一緒にずっと居られるだろ?」
翔はそんな子供みたいな事を言って由亜を驚かす。
「…翔さんがお店にいないと困る人、沢山いますよ…。」
「ここ数年、有給休暇も使わず働き詰めだったんだ。ここらで休んだとしても誰も咎めない。由亜は気にせず俺に世話されてればいい。」
「でも…」
そういう訳にはいかないと、話しだそうとしたその時、チュッと音を立てて軽いキスが降り注ぐ。
「今日ぐらいは言う事聞いとけ。反抗したらキスするからな。」
楽しそうにそう言う彼をどう止めるべきなのか、分からず由亜は戸惑い流される。
その日から3日間、由亜は至れり尽くせりの日々を過ごす。
翔は食料の買い出しくらいしか家を空ける事も無く、由亜の側にいてくれた。
今まで料理はした事がない筈の人が、スマホを片手に病人向けの胃に優しいメニューを選び、作ってくれた。
トイレに行く以外は余り歩かせてもらえず、過保護で極上な介護を与えられた日々だった。
そして、3日後には熱も下がり翔も胸を撫で下ろした。
ベッドからやっと起き上がる事の出来た由亜を、翔が片腕で背中を支えてくれる。
「明日、数時間『colors』に行って来るけど、1人で大丈夫か?」
現実を思い出して由亜は急に不安になる。
「私、無断欠勤してしまいましたけど…まだ籍はあるんでしょうか?」
恐る恐るそう聴くと、
「大丈夫だ。この休みの間は有休扱いにしてくれて構わないから。それに、由亜がいないと経理の業務が滞って大変だと連絡を受けている。戻って来てくれると俺は助かる。」
本職の昼間の仕事はもう、手遅れかもしれないけど…
「翔さん、退職届を出した身で、勝手を言って申し訳ありませんが…私、本当はcolorsで働きたいんです。」
由亜は不安に押しつぶされそうになりながらも、自分の本当の気持ちを初めて口にする。
「元から退職届は受け入れるつもりはなかった。明日、体調に問題なければ一緒に出勤しよう。」
翔はそんな由亜の頭をポンポンして、優しく微笑みを浮かべる。
「ありがとうございます。」
嬉しい気持ちが感極まって、思わず翔に抱きついてしまう。それをそっと抱き止めながら、翔も不思議な力が湧き上がってくるのを感じていた。
由亜さえこの腕の中にいてくれるのならば、怖いものなど何も無いというぐらい無敵になった気がしてくる。そのまましばらく抱き合ったまま、お互いの温もりを感じ幸せを噛み締めた。
「あと一つ…お節介だったかもしれないが、由亜が寝込ん出る間に、由亜の職場に連絡を入れておいた。本人の意志と反した不当な辞職だったと伝えたら、良かったら戻って来て欲しいと、上司から直々に連絡が来た。」
「…ほんとに!?戻れるんですか?」
「急な退職だったから事務処理が間に合わず、今はとりあえず、有休休暇を消化している事になってるらしい。退職の話しも上の者しかまだ知らないようだから、気にせず来週からまた戻って来て欲しいと言う事だ。」
由亜は信じられないと言う風に、抱き合ったままの体勢で顔をあげ、しばしの間、翔の瞳を見つめその言葉を頭の中で反芻する。
だんだんと込み上げて来る感情で、涙が今しも溢れ落ちそうだ。
「翔さん…ありがとう、ございます。」
そう、言葉にするのがやっとだった。
そんな由亜の涙をどうにかしてせき止めたいと、翔はあたふたと慌て、惜しげもなく自分の着ているシャツを犠牲にしてくれる。
しばらく肩を揺らし、声を押し殺し泣いていた由亜だったが、病み上がりの身には堪えたらしく、またうとうとと知らぬ間に意識を手放してしまった。
翔はベッドに由亜を寝かし額に手を置き熱を測る。
「風邪…移っちゃいませんか…?」
先程の一部始終を振り返り、ボッと赤くなりながら由亜は翔の顔を見つめる。
「むしろ移りたくてしてるんだ。その方が一緒にずっと居られるだろ?」
翔はそんな子供みたいな事を言って由亜を驚かす。
「…翔さんがお店にいないと困る人、沢山いますよ…。」
「ここ数年、有給休暇も使わず働き詰めだったんだ。ここらで休んだとしても誰も咎めない。由亜は気にせず俺に世話されてればいい。」
「でも…」
そういう訳にはいかないと、話しだそうとしたその時、チュッと音を立てて軽いキスが降り注ぐ。
「今日ぐらいは言う事聞いとけ。反抗したらキスするからな。」
楽しそうにそう言う彼をどう止めるべきなのか、分からず由亜は戸惑い流される。
その日から3日間、由亜は至れり尽くせりの日々を過ごす。
翔は食料の買い出しくらいしか家を空ける事も無く、由亜の側にいてくれた。
今まで料理はした事がない筈の人が、スマホを片手に病人向けの胃に優しいメニューを選び、作ってくれた。
トイレに行く以外は余り歩かせてもらえず、過保護で極上な介護を与えられた日々だった。
そして、3日後には熱も下がり翔も胸を撫で下ろした。
ベッドからやっと起き上がる事の出来た由亜を、翔が片腕で背中を支えてくれる。
「明日、数時間『colors』に行って来るけど、1人で大丈夫か?」
現実を思い出して由亜は急に不安になる。
「私、無断欠勤してしまいましたけど…まだ籍はあるんでしょうか?」
恐る恐るそう聴くと、
「大丈夫だ。この休みの間は有休扱いにしてくれて構わないから。それに、由亜がいないと経理の業務が滞って大変だと連絡を受けている。戻って来てくれると俺は助かる。」
本職の昼間の仕事はもう、手遅れかもしれないけど…
「翔さん、退職届を出した身で、勝手を言って申し訳ありませんが…私、本当はcolorsで働きたいんです。」
由亜は不安に押しつぶされそうになりながらも、自分の本当の気持ちを初めて口にする。
「元から退職届は受け入れるつもりはなかった。明日、体調に問題なければ一緒に出勤しよう。」
翔はそんな由亜の頭をポンポンして、優しく微笑みを浮かべる。
「ありがとうございます。」
嬉しい気持ちが感極まって、思わず翔に抱きついてしまう。それをそっと抱き止めながら、翔も不思議な力が湧き上がってくるのを感じていた。
由亜さえこの腕の中にいてくれるのならば、怖いものなど何も無いというぐらい無敵になった気がしてくる。そのまましばらく抱き合ったまま、お互いの温もりを感じ幸せを噛み締めた。
「あと一つ…お節介だったかもしれないが、由亜が寝込ん出る間に、由亜の職場に連絡を入れておいた。本人の意志と反した不当な辞職だったと伝えたら、良かったら戻って来て欲しいと、上司から直々に連絡が来た。」
「…ほんとに!?戻れるんですか?」
「急な退職だったから事務処理が間に合わず、今はとりあえず、有休休暇を消化している事になってるらしい。退職の話しも上の者しかまだ知らないようだから、気にせず来週からまた戻って来て欲しいと言う事だ。」
由亜は信じられないと言う風に、抱き合ったままの体勢で顔をあげ、しばしの間、翔の瞳を見つめその言葉を頭の中で反芻する。
だんだんと込み上げて来る感情で、涙が今しも溢れ落ちそうだ。
「翔さん…ありがとう、ございます。」
そう、言葉にするのがやっとだった。
そんな由亜の涙をどうにかしてせき止めたいと、翔はあたふたと慌て、惜しげもなく自分の着ているシャツを犠牲にしてくれる。
しばらく肩を揺らし、声を押し殺し泣いていた由亜だったが、病み上がりの身には堪えたらしく、またうとうとと知らぬ間に意識を手放してしまった。