夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
これが世に聞くネグリジェというものだろうか…好奇心が目を出して、とりあえず着てみる。

シルクのように滑らかで、ウェディングドレスのように純白だ。

胸元がやたらスースーして心許ないけど…きっとこれが正解だろう。

恐る恐るドアを開けて、廊下を伺う。

案の定、廊下の壁にもたれながら、心配そうにこちらを見て来る翔がいる。

「パジャマを…沢山ありがとうございます。」
ドアから顔だけ出した状態で由亜が言う。

「気に入ったのはあったか？」
翔は手を差し出し由亜から出て来るまで、じっと待ってくれている。

ドキドキ高鳴る胸を片手で押さえながら、そっと翔の差し出された手を反対側の手で握る。

「あれ…？翔さんもお風呂に入ったんですか？」

「ゲストルームにシャワーブースがあったから、由亜を待たせたら絶対寝るだろ？」
笑いながら翔が言う。

その一言で由亜は覚悟を決める。
ついに…この時が来た。とばかりにまた緊張し始める。

先程の雅美ママの言葉が頭に蘇る。
『… 花嫁は家に帰ってからもきっと大変だから、今夜は頑張ってね。』

サラッと聞き流してしまったけど、きっとこの事を言っていたんだと、今理解して赤面する。

寝室には、大きなクイーンサイズの天蓋付きベッドが置かれていて、由亜の緊張は否応無く MAXに達する。

「何が飲んだ方がいい。」
由亜をベッドサイドに座らせて、翔はいつもと変わらず世話を焼く。

渡されたミネラルウォーターのペットボトルはキンキンに冷えていて、キャップさえも翔が開けてくれるという極上の接待を受ける。

さすがホスト界No.1の男、細かい対応も見逃さない。

冷たいミネラルウォーターが、いくらか気持ちを落ち着かせてくれた。

「冷たくて美味しい。」
由亜は少しだけ緊張を解いて、微笑みを浮かべる。
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