夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
彼に連れて来られた場所は『staff only』と書かれた扉の向こう側で、中には準備室に、応接室、事務室の3つの扉があった。
その中の1番奥の扉、事務室に進む。
「ここだ。」
部屋の中は、事務机が3台にその上にPCが1台ずつに置かれ、コピー機や電話機などの機器類が揃った、ちゃんとした事務室だった。
「今は週3で1人経理担当が来るが、給料等は外注に頼っているのみだ。今から経理士を呼ぶから、今週中に引き継ぎをしてくれ。」
そう言って、その経理士に電話をしている。
由亜は事の早さに若干面食らいながら、一つ大切な事に気付く。
「私みたいな人間をいきなりこんな場所に通して、こんな大切なお金管理なんてさせて…いいんですか?」
1人しかいない経理だなんて、横領だって簡単にできてしまうのに…。
「会って間もない私に信頼も無いのに、大事な経理を任せて大丈夫なんですか?」
由亜はつい、何度も確認してしまう。
「お前に横領出来るような勇気なんて無いだろ?
金に困ってるようには見えないし、なぜうちに来たのか疑問ではあるが。いつも俺の感は正しい。」
自信家で俺様で…
どこまでも好きになれない人間だ。
「分かりました…。」
何わともあれ、この人の懐に入らなければならない、復讐の為にも。ここまで、とんとん拍子に近付けたのは予想外だったけれど…。
「あと15分後には経理士が来る。
引き継ぎ期間は時給2000円でどうだ?モノになるかならないかは1ヶ月で決める。その間は週5日、休みは君に任せる。それでいいか?」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
とりあえず首は繋がった。
引き継ぎの経理士が来るまで、しばらく1人PCの使い方を確認しながら待つ。
会計ツールは丁度今の会社と似ているし、これならなんとかなりそうと、由亜は1人ホッとする。
だけど…用が済んだ筈の真壁がまだ、なぜが事務所の椅子に座り無言でこちらを見て来るから…若干の居心地の悪さを感じてしまう。
夜の8時半を回っている。
しかも今日は金曜日、この時間は1番の掻き入れ時なんじゃないの?
こんな小娘1人に構っていていいのだろうか…。
沈黙に耐えられなくなって、由亜はついに声を上げる。
「あの…。今、お店が1番忙しい時間帯なのでは?貴方がここにいて大丈夫なんですか?」
「オーナーは別に店に立たなくてもいい。
なんだ?ここに居たら邪魔か?」
怪訝な顔をしてくるから、慌てて由亜は取り繕う。
「いえ…。もしも私が勝手をするかもと心配されているのなら…他の店員さんでも呼べば良いのにと…。
お忙しいでしょうし。」
「俺に指図してるのか?怖いもの知れずだな。」
真壁がフッと鼻で笑う。
つい馬鹿にされたようで、ムカッとしてしまうのだが…
いけない、彼はこの店のオーナーだ。出来るだけ穏便に、仲良くなって懐に入らなくちゃ。
その中の1番奥の扉、事務室に進む。
「ここだ。」
部屋の中は、事務机が3台にその上にPCが1台ずつに置かれ、コピー機や電話機などの機器類が揃った、ちゃんとした事務室だった。
「今は週3で1人経理担当が来るが、給料等は外注に頼っているのみだ。今から経理士を呼ぶから、今週中に引き継ぎをしてくれ。」
そう言って、その経理士に電話をしている。
由亜は事の早さに若干面食らいながら、一つ大切な事に気付く。
「私みたいな人間をいきなりこんな場所に通して、こんな大切なお金管理なんてさせて…いいんですか?」
1人しかいない経理だなんて、横領だって簡単にできてしまうのに…。
「会って間もない私に信頼も無いのに、大事な経理を任せて大丈夫なんですか?」
由亜はつい、何度も確認してしまう。
「お前に横領出来るような勇気なんて無いだろ?
金に困ってるようには見えないし、なぜうちに来たのか疑問ではあるが。いつも俺の感は正しい。」
自信家で俺様で…
どこまでも好きになれない人間だ。
「分かりました…。」
何わともあれ、この人の懐に入らなければならない、復讐の為にも。ここまで、とんとん拍子に近付けたのは予想外だったけれど…。
「あと15分後には経理士が来る。
引き継ぎ期間は時給2000円でどうだ?モノになるかならないかは1ヶ月で決める。その間は週5日、休みは君に任せる。それでいいか?」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
とりあえず首は繋がった。
引き継ぎの経理士が来るまで、しばらく1人PCの使い方を確認しながら待つ。
会計ツールは丁度今の会社と似ているし、これならなんとかなりそうと、由亜は1人ホッとする。
だけど…用が済んだ筈の真壁がまだ、なぜが事務所の椅子に座り無言でこちらを見て来るから…若干の居心地の悪さを感じてしまう。
夜の8時半を回っている。
しかも今日は金曜日、この時間は1番の掻き入れ時なんじゃないの?
こんな小娘1人に構っていていいのだろうか…。
沈黙に耐えられなくなって、由亜はついに声を上げる。
「あの…。今、お店が1番忙しい時間帯なのでは?貴方がここにいて大丈夫なんですか?」
「オーナーは別に店に立たなくてもいい。
なんだ?ここに居たら邪魔か?」
怪訝な顔をしてくるから、慌てて由亜は取り繕う。
「いえ…。もしも私が勝手をするかもと心配されているのなら…他の店員さんでも呼べば良いのにと…。
お忙しいでしょうし。」
「俺に指図してるのか?怖いもの知れずだな。」
真壁がフッと鼻で笑う。
つい馬鹿にされたようで、ムカッとしてしまうのだが…
いけない、彼はこの店のオーナーだ。出来るだけ穏便に、仲良くなって懐に入らなくちゃ。