夜の魔王と呼ばれる男、実は過保護で激甘でした
「どうぞ…。」
と、小さな声を聞き緊張しながら服を脱ぐ。
ガラス張りの風呂場は湯気でよく見えないが、湯船に彼女の背中が垣間見えて、幻想的な風景に手を止めて見入ってしまう。

「入るぞ。」
中に入って、とりあえず身体を洗う。

恥ずかしいのか、背中越しの彼女のうなじが綺麗で、目が離せなくなる。

「よく寝れたか?後1日部屋は取ってあるから、のんびりしてから帰るのもいいし、もう一泊してもいい。疲れてなければ、近場に水族館や遊園地があるから行って見るか?」

少しでもお互いの緊張をほぐす為、いつもより饒舌になってしまう。

「水族館…?行ってみたいです。」
やっと、顔を見せてくれてホッとする。それなのに直ぐにぐるっと向きを変えてしまう。

「由亜…こっち向いて。さすがに寂しい。」
同じ湯船に浸かりながら、この距離感は辛いとそっと呼びかける。

ゆっくりとこちらを向いてくれるが、恥ずかしそうに目が泳ぐ。ガラス張りの窓から差し込んだ、朝の太陽を背に背負って眩しいぐらいに輝いて見える。

向かい合って見つめ合うが、寝れるほど広いバスタブの隅にいられては、その可愛い顔だって湯気でよく見えない。

仕方なく少し強引に引き寄せて、膝の上に横抱きにする。驚いて目を丸くする由亜と、やっと至近距離で目が合って嬉しくなる。

何もしないとはとても言えない。
下半身は先程からずっと痛いほどに反応している。理性を保っていられるか、自分との戦いだ。

入浴剤で白く濁った湯に、真っ赤な薔薇の花弁が浮かび上がる。
「お掃除が大変そうですね…綺麗だけど…。」
由亜の率直な感想が、彼女らしくてフッと笑う。

頬を染めて照れ笑いするその横顔に、堪らずキスをそっと落とす。

「少し…触れてもいいか?」
お伺いを立てながら、既に目の前のたおやかな胸の谷間に釘付けになる。

見えそうで見えない絶妙加減が、よりそそる。

こくんと小さく頷くのを待って、そっと柔らかな部分に触れると、ビクッと震える反応が可愛くて、つい執着して触り続ける。

「やっ…待って……しょ、翔さん……もう…。」
息も乱れて、真っ赤に染まって由亜を抱き上げ、

「抱いてもいいか?」
と、律儀にお伺いを立てる。

由亜が頷くより早く洗面所に戻った俺は、バスタオルで由亜の身体を優しく拭いて、バスタオルで包む。
自分はそこそこで飛沫を振り落とし、腰にタオルだけ巻いて、また抱き上げてベッドに戻る。

「のぼせたか?」
体調を伺うが大丈夫そうだ。

ペットボトルのミネラルウォーターを渡せば、美味しそうにコクコクと飲んでいる。
口端から漏れた水が頬を伝う。堪らずペロリと舐めると、また目を丸くしてびっくりする。

もう既に制御不可能だ。
そのままペットボトルを奪い、口移しで水を与える。

その後は本能の赴くままに、それでもギリギリ由亜を気遣い、夢中になって彼女を煽る。

そしてやっと一つになれた時、不覚にも涙が出そうになるほど感動してしまった。

初心の由亜に無理をさせてしまっただろうか…。

事を終えてやっと我に帰った時、肩で息する彼女の背中に、どうしようもない罪悪感に襲われる。
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