【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
「う――わっ!?」
刹那、驚きすぎて足をもつれさせた僕は、障害物一つないにもかかわらずその場ですっころんだ。床に肘を打ち付けて、痛みにうずくまる。
けれどその痛み以上にベッドの上の少女のことが気になって、僕は涙目のまま必死にベッドへ這い上がった。
すると、やはりそこにあるのは少女の姿。見間違いなどではない。
美しい金色の髪に、乳白色の肌。僕より少し大人びた顔つきのその子は、けれどまるで小さな子供のように、すやすやと寝息をたてて気持ちよさそうに眠っていた。
「……知らない子だ」
見覚えのない少女の外見に、僕はただただ混乱した。
この部屋にいるということは貴族か使用人なのだろう。けれど僕はこの王宮で働く使用人の顔を全員把握しているのだ。だからこの子が使用人というのはあり得ない。
となると、やはり貴族の子供だろうが……。
「でも、このドレス……」
正直、貴族と呼ぶにはあまりにも貧相な服装なのだ。色が地味だとかそういう問題ではない。かといって、少女の肌や髪は艶やかで美しく、使用人とは明らかに違っている。
いや、彼女の正体など大した問題ではない。今問題なのは、彼女が僕のベッドで寝ているというその事実……。
「ねぇ、君、起きて」
ひとまず起こさねば。そう考えた僕は、彼女に声をかけてみた。
けれど、何度声をかけても起きる気配はない。
「ちょっと……起きてくれないと困るんだけど……」