【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
あの日――クリスマスから半年が過ぎ、わたしたちは以前にも増してお互いを想うようになっていた。
けれどここ最近は会う回数がめっきり減った。
おばあさまが心配で、離れられなくて――こうやって月に二、三回、生活に必要なものを町に買いに来るときと、そして彼が仕事の合間を縫っておばあさまのお見舞いに来てくれる短いひととき、それだけが、今のわたしに許された彼と過ごせる時間。
寂しくないと言えば嘘になる。それはきっと、彼の方も同じだろう。
けれどそれでもエリオットはわたしを気遣って、いつも優しく見守ってくれている。それが最近とても心苦しくなってきて――でもそんなことを口にしてしまっては彼を傷つけてしまうだろうと――わたしは段々と、彼に笑顔を見せられなくなってしまっていた。
でもきっと、エリオットにはそんな気持ちすら見透かされてしまっているのだろう。
彼は、席を立ったわたしにすぐに追いついて、わたしが抱えた荷物の袋を軽々と持ち上げた。
「送るよ」
そう言って、彼はいつも以上に真剣な顔でわたしを見つめる。その瞳に、わたしの心臓がとくんと跳ねた。
「でも、まだ仕事があるんじゃ……」
「君以上に大切なものなんてない。ねえユリア、僕はそんなに頼りないかな」
「――っ」
彼の瞳が、わたしを捕らえて離さない。その視線が苦しくて、痛くて、わたしは思わず俯いてしまった。――本当は、嬉しいはずなのに。
けれどそんなわたしに、尚も優しく落ち着いた声で語りかけるエリオット。
「顔を上げて、ユリア。君の気持ちは理解しているつもりだよ。僕たち、何年の付き合いだと思ってるの?」
「…………」
その言葉に顔を上げると、そこにはいつものように微笑む彼の姿があって。
それは凛々しくも穏やかな、初夏の太陽のように温かい笑顔。
彼はわたしの右手を、大きくたくましく成長した左手で優しく包み込む。
「帰ろうか」
わたしの愛しいエリオットが、その瞳にわたしだけを映してくれる。
わたしはその優しさに心癒やされながら、彼に手を引かれて歩き出した。