【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
――あぁ、わたしは本当に……この人には敵わない。
エリオットの声が、笑顔が、その眼差しが……いつだってわたしの心をときめかせ、強く掴んで離さない。眩しくて眩しくて、その存在自体が愛しくて……。
「ねぇユリア、覚えてる? 僕たちが初めてここで出会った日のこと」
エリオットの栗色の髪を輝かせる木漏れ日。彼の柔らかい前髪を揺らす爽やかな春風。彼の瞳の色を一層深く美しく彩る青々とした木々。
そのどれもが、まるで彼のためだけに存在しているのではないかと錯覚してしまうほどに。
「八歳のときだったよね。僕が森で迷って困り果てているところに、突然空から君が降ってきた」
「空って……。それはあなたが大声を出すからじゃない」
――そうだ。あの日もわたしは木の上でうたた寝していて。でも急に叫び声が聞こえたものだから、驚いて落ちてしまったのだ。見事に――エリオットの上に。
「あのとき僕は天使が舞い降りてきたのかと思ったよ。町の教会の天井に描かれている天使の絵と、本当にそっくりだったから」
「――っ。それは……初耳ね」
「そう。君の下敷きになって頭を打って。地面に倒れた僕の顔を覗き込む君の瞳があまりに美しくて――あぁ僕は死んだんだ。空からお迎えが来たんだな、って思ったよ」
「…………」
これは褒められているの? それともからかわれているのかしら……。
わたしが返事に困っていると、エリオットはふわりと微笑む。
「僕はね、あの日、君を一目見て一瞬で恋に落ちたんだ。あぁ、なんて可愛い子だろうって」
「――っ」
眩しげに細められる、彼の瞳――。
「君は知らなかっただろう? 君が僕のことを好きになるよりもずっと前から、そう、初めて会ったあのときから、僕はずっと君のことが好きだったんだ」
「――っ」