【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
「わたしは……薄情かしら」
つい、そんな言葉が出てしまう。
エリオットの肩が、一瞬震えた。
「そんなことない。言い出したのは僕だから」
いつもよりも低い声で、彼はそう言う。
「それに君のおばあさまだって、君が一人でいることは望まないと思う」
前だけを向いて、迷いなく森を進むエリオット。
わたしの手をしっかりと掴んで離さない、いつもより冷たい彼の手のひら。それがどうしてか、少しだけ……怖い。
「ごめんなさい、エリオット。――わたし、自分で自分がよくわからないの」
「…………」
「わたし……本当にいいのかしら。わたし、おばあさまに何もしてあげられなかったわ。なのに、わたしはあなたの優しさに甘えて……今こうしてあなたに手を引かれて歩いている。あなたはわたしと一緒にいてくれる。――それが、なぜかわからないけど……とても、怖いのよ」
「――っ」
刹那、足を止めるエリオット。そして音もなく振り向いた彼の瞳は、雨に濡れて、まるで泣いているように見えた。
「何を言い出すの。この前僕が言ったこと、覚えてないの……?」
微かに歪む、彼の唇。それは多分、怒りの感情を表していて、わたしは思わず息をのむ。
あぁ、言わなければよかった――そう後悔しても、もう遅い。
おばあさまが亡くなってからずっと側にいてくれたエリオット。わたしを抱きしめ、慰めてくれたエリオット。そんな彼の優しさに甘えて、とうとう彼を傷つけた。
だけど……もう、どうしようもなくて……。
「……覚えて、いるわ」
わたしは必死に、その言葉だけを絞り出す。
「なら……ッ! そんな悲しいこと……言わないでよ。――僕は」
エリオットの顔が悔しげに歪んで……それを隠すかのように、俯いて……。
「僕は……こんなに君が好きなのに……」
「――っ」