【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉

4.幼い愛


 ヴァイオレット、面白い本を見つけたんだ。
 ヴァイオレット、美味しいお菓子を貰ったから、一緒に食べよう。
 ヴァイオレット、今日は天気がいいから、僕と一緒に庭を散歩しよう。

 僕は何かと用を見つけては、君を呼び出した。

 少しでも長く君の側にいたくて、どうにかして僕を好きになってもらいたくて。
 そのためなら僕は、君が望むもの全てを君に与えるよ。

 ――ヴァイオレット、君は何が好き?

 綺麗なお花がいいかな? それともお菓子? あぁ、君は聡明だから、外国から取り寄せた珍しい本でもいいかもしれないね。

 僕は君に何度も尋ねる。

「ヴァイオレット、君の好きなものは何? 君は何が欲しい?」

 けれど君は決して僕の質問には答えなかった。決して僕からのプレゼントを受け取ってはくれなかった。
 君は僕の言葉を聞く度に、ただ困ったような顔をするだけ。

 ねぇどうして? どうして君はいつもそんなに困った顔をするの? 僕はただ君のことが好きなだけなのに。ただ君に喜んでもらいたいだけなのに……。


「殿下、申し訳ございません。私にはそれを受け取ることはできません」

 悲しそうな、困ったような顔をして、僕を拒絶し続ける君。

 だけど、僕には君がそんな顔をする理由がわからなかった。
 だって僕に聞こえる君の心の声は、決して僕を拒絶しているものではなかったから。それなのに、どうして君はそんな顔をするの?

「殿下……こういうことはお辞めいただけませんか? その……困りますので」

 どうして? なんで? 僕が王子で、君が侍女だから? でもそんなこと関係ないよ。君が望むなら僕は王子だって辞めてやる。僕はそれくらい君のことが好きなんだ。

 けれど、きっと君はそんなこと望まない。それなら僕は、これ以上いったいどうしたらいいというのか。
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