【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
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「アーサー、君は少し見ない間に変わったな」
学校がクリスマス休暇に入り、久しぶりに顔を見せに来たヘンリーが、僕に向かってそう言った。
庭園に広がる色とりどりのクリスマスローズ。それを遠い目で眺める彼の表情は、なぜかとても不満げだった。
「あの侍女見習いがそうさせたのか?」
ヘンリーは、僕の視線の先に君の姿を見つけ、微かに眉をひそめる。その口調は僕の知っているヘンリーのものとは違っていて、僕はなぜかすごく嫌な気持ちになった。
ヘンリーは、君から視線を逸らすことなく続ける。
「ヴァイオレット……確かパークス男爵の養女だったよな。アーサーお前、もしかして知らないんじゃないのか?」
「知らないって……何を……?」
正直僕は驚いていた。だって僕は知らなかったんだ。ヴァイオレットが男爵家の養女だったなんてこと。それにヘンリーが、ヴァイオレットの素性を知っていることを。
同時に、僕はやっと気が付いた。そういえば僕は、ヴァイオレットのことを何一つ知らないのだと。
「あぁ、やっぱりな。その顔は知らないって顔だ。いいかアーサー、彼女の両親は事故で亡くなっている。今は母親の生家のパークス家が彼女の養家となっているが、あの家はあまりいい噂を聞かないぞ。彼女をここへ侍女として入れたのも、本音は厄介払いというところだろう。あまり親密にはならない方がいい。足元をすくわれるぞ」
「――っ」
ヘンリーのその言葉に、僕は喉を詰まらせる。
彼の表情は真剣で、きっと僕のことを心から心配してくれている。けれど僕は、どうしてもそれをすんなりと受け入れることができなかった。
なぜかって? それは多分、僕が知らない彼女のことを、ヘンリーが知っていたからで。
彼が彼女を、あまりよく思っていないからで……。