【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉

 ヘンリーはそんな僕に呆れた様子で、小さくため息をつく。

「まぁ、だけど……そうだな。彼女は悪い子じゃないよ。学校で仲良くなった奴から、彼女のことを聞いたことがある。それは保証する。だから……彼女のことが本当に好きなら、彼女を困らせないようにしろ。誰にも知られないように……上手くやれ」
「でも、そんなことどうやって」
「それくらいは自分で考えろよ」
「――っ」

 ヘンリーは僕にそれだけ言うと、右手をひらりと掲げて帰っていった。
 その背中は、気のせいかもしれないけれど、少しだけ寂しげだった。

 僕は門の外へと消えていくヘンリーの姿を見送ると――決意する。

 ヘンリーは三ヵ月前と何も変わっていなかった、変わってしまったのは僕の方だった。

 けれど、駄目なのだ。このままの僕じゃ駄目なのだ。

 僕はもっと考えなければならない。この力に頼るのではなく、王子の立場に胡坐をかくのではなく、ヘンリーのようにもっと周りを知らなければならないのだ。

 そうでなければ、こんな僕では、きっと彼女は見向きもしてくれないだろうから……。

 だから僕は変わりたい。いや、変わるんだ。もっとたくさん勉強して、君を守れるように。君を、いつかきっと迎えに行けるように。

 君の笑顔を見るために。この僕を、きっと好きになってもらえるように。


 僕は乾いた冬空を見上げる。それはどこまでも広く遠く、まるで君の瞳のように透き通った淡い水色に、染められていた。
< 18 / 121 >

この作品をシェア

pagetop