【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
6.喪失
「君が僕に手紙を寄こすなんてな。思わず二度見したよ。初めてじゃないか?」
僕の誕生日パーティーから一週間が経った日の午後。
ヘンリーは僕の部屋で、僕から届いた封筒を愉快そうに見せつけ、にやりと笑った。
僕はパーティーを終えてすぐ、ヘンリーに手紙を送っていた。
内容は、パーティーにいた黒目黒髪、黒いスーツを身にまとっていた少年の正体を知らないか、というものだった。
あの日からちょうど一週間。僕はその間ずっと、あの少年のことを考えていた。
いったい彼は何者なのか。僕の中の彼が予告した〝良くないこと〟とはいったい何か……。
彼の声はあの日から聞こえてこない。僕の方から話しかけても、返事一つ返ってこない。
そりゃあ、いつもだって一ヵ月や二ヵ月出てこないことはある。だけどあんなことがあった後に反応がなくなるなんて、普通に考えればおかしいだろう。――それもあって、僕は不安感にさいなまれていた。
「――それで、ヘンリー。手紙の内容についてなんだけど……」
僕が尋ねると、ヘンリーはソファにどかっと腰を下ろし、「急かすなよ」と息をつく。
「そもそも、人探しなら大人に頼めばいいじゃないか。どうして俺に?」
その質問はもっともだ。僕だってそう思う。
けれど、大人に尋ねれば絶対に余計な詮索をされるに決まっている。それは避けたい。そう考えての行動だった。
僕はヘンリーの質問にすぐに答えられず、俯いた。
すると彼は、どういうわけか今にも吹き出しそうに表情を崩す。――否。事実、彼は吹き出した。