【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
 僕が悶々とする中、あっけらかんとした様子で続けるヘンリー。 

「――ま、それは置いといて。ウィンチェスター侯は知ってるか? さすがに名前くらいは知ってるだろ?」
「ウィンチェスター……うん、知ってるよ。これから自分が通う学校の名前だしね」
「そう。ま、創設したのは四代前の当主だけどな。で、そのウィンチェスター侯には、ウィリアムっていう息子がいるんだ。そのウィリアムの付き人をしているのが、君の探してるルイスってわけ。ウィリアムからは、パーティーで挨拶されただろう?」

 ――どうだったかな。正直、覚えていない。

 僕が無言でいると、ヘンリーは呆れたように眉を寄せた。

「ま、あれだけ人がいたからな、覚えてなくても仕方ない。けどウィリアムは君と歳が一緒だし、入学したら同級生になるんだから、多少は興味持っておいて損はないと思うよ」
「……ルイス。……ウィリアム」

 正直拍子抜けだ。こんなにもあっさりとあの少年の正体がわかってしまうなんて。

 それにしても、ヘンリーはどうしてルイスのことを知っているのだろう。ウィリアムは貴族の子息だからともかくとして、普通、付き人のことまで把握しているものだろうか?

 そう思ってヘンリーを見やると、彼は僕の心を読んだらしい。

「スペンサー侯爵の長男にクリストファーって奴がいて、俺と同じ寮なんだ。クリスの母親とウィンチェスター侯爵夫人は双子の姉妹で、ウィリアムとは従兄弟同士なんだよ。それでクリスから時々ウィリアムの話を聞くんだ。クリス、いっつも自分の弟とウィリアムを比較してぼやいてるんだぜ。〝あいつらも少しはウィリアムを見習ってくれないものか〟って。まぁそれも口だけだっていうことは、皆にバレバレなんだけど」――ヘンリーはそう言って、屈託なく笑う。

 その笑顔からは、彼がいかにその友人を大切に思っているのかが伝わってきた。というより、事実二人は仲がいいのだろう。
 そうでなければ、クリスなどと愛称で呼んだりはしないのだから。
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