【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉

 そう思うと同時に、僕の心に芽生える卑屈な感情。会ったこともない相手に対する嫉妬心。それが、僕の心をどんよりと重くする。――そのクリスっていう人が、羨ましくて堪らない。

「仲……いいんだね」

 僕が呟くと、ヘンリーは虚を突かれたように一瞬だけ真顔になった。――が、すぐに笑い声をあげる。

「ははっ、何言ってるんだよ! 君だって入学したら、気の置けない友人の一人や二人、すぐにできるさ!」

 そう言って、僕の背中をバシバシと力強く叩く彼。

「――で、そのルイスがどうしたって? 答えてやったんだから、理由くらい教えてくれよ」
「いや……理由ってほどじゃ……。ただこの前のパーティーで……なんていうか……見られてたような気がして……」
「何だって? 一介の付き人ごときが君を注視したって言うのか?」

 僕の返答に、顔を思いきり曇らせるヘンリー。僕は慌てて言い直す。

「あっ、いや、見られてたっていうか、ちょっと目が合ったっていうか。それに、ほら、珍しいでしょ。髪も瞳も真っ黒で」
「あぁ……そういうこと。まぁ確かにな。クリス曰く、ルイスはもともと孤児だったらしいから、外国の血が混じってるんじゃないか?」
「そう……なんだ」

 ――孤児。それがいったいどういう経緯で侯爵家に拾われたんだろう。

 とても気になるが、さすがにそこまではヘンリーだって知らないだろう。それに下手に調べて、藪をつついて蛇を出す、なんてことになったら最悪だ。

 この話はこれで終わりにしよう。少なくとも、続きはもう一人の僕の意見を聞いてからにした方がいいだろう――僕がそんな風に考えていると、唐突にヘンリーの声色が変わった。

「そういえば……安心したよ。俺、君はきっと落ち込んでるだろうと思ってたから」
「……え?」

 ――急に何の話だ?
< 28 / 121 >

この作品をシェア

pagetop