【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉

 言葉の意味がわからず彼を見つめる僕を、じっと見つめ返すヘンリーの瞳。
 それはどういうわけかどこか切なげで――僕は(またた)く間に不安にさいなまれた。

「まぁ、仕方ないことだもんな。彼女は侍女だし、いずれそうなるって……さすがの君でもわかってたんだな」
「――え?」

 侍女ってヴァイオレットのことだよね。彼女がいったい何だって……?

 僕は同情するように唇を歪めるヘンリーの、その表情の意味が少しも理解できなくて……。

 だがヘンリーは、そんな僕の態度で察したのだろう。一瞬、しまったという顔をして、僕からさっと目を逸らす。

「……君、もしかして何も聞いてないのか?」
「何って……何、を……?」
「――っ」

 僕の呆けた返事に、ヘンリーの顔が罪悪感に染まった。
 頭をうなだれる彼に、それでも僕は尋ねずにはいられない。

「侍女ってヴァイオレットのことだよね。彼女が、どうかした……の?」

 僕の震える問いかけに、ヘンリーは何かを考えるようにぎゅっと瞼を閉じた。

 そして数秒の後、躊躇(ためら)いがちに口を開ける。

「彼女……婚約したんだ。もうすぐ、侍女をやめるらしい」
「――は」
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