【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
――本当はわかってるんだ。僕には何もできないことくらい、ちゃんとわかってるんだ。
でも、やっぱりどうしても許せないのも本心で……。ヴァイオレットが結婚するなんて、彼女が僕の前からいなくなるなんて……認めたくなくて。
「……どうして皆、僕から離れていくんだよ……どうして、そんな男と結婚なんて……」
父上も、母上も――誰一人僕を愛してくれない。誰も僕の傍にはいてくれない。
皆みんな、いなくなってしまう。ヴァイオレットも……それにきっと、ヘンリーだって。
僕の周りにいる人は皆、例外なく不幸になる……。それはきっと、僕のせいで……。
「僕……本当に好きなんだ。ヴァイオレットが……好きなんだ。彼女には……幸せになってもらいたいんだ」
「……ああ」
僕の声に応えるように、ヘンリーの瞼が瞬いた。
その瞳は切なげで、悲しげで、僕は酷く苦しくなった。僕のせいでヘンリーがこんな顔をしているのかと思うと、胸が痛くて痛くてたまらなくなった。
「でも僕……彼女には言わないよ。彼女を困らせたくないし……今の僕には何もできないって……本当は、ちゃんとわかってるから」
「……っ」
ヘンリーの顔が歪む。まるで今にも泣きだしそうに。
「僕、彼女のことは諦めるよ。でも、その代わり一つ約束してくれないかな? 君だけは僕の傍にいてくれるって。何があっても、僕から離れていかないって……。お願いだ、ヘンリー。嘘でもいいから、そうだと言って……」
「――ッ」
ああ、僕はなんて卑怯なんだろう。こんな風にお願いしたら、断れないのはわかっているのに。ただ空しくなるだけだって……わかっているのに……。