【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉

 ヴァイオレットにもヘンリーにも、いつだって笑っていてほしいと願っているのは本心なのに……どうにかして、この寂しさを埋めたくて。
 誰のことも苦しめたくないと思っていながら、誰のことも縛り付けたくないと祈っていながら、愛されたいと願わずにはいられない――。

「お願いだ……君がそう言ってくれたら、僕はちゃんと彼女を諦めるから」

 ヴァイオレットのことは本当に大好きだ。離れたくない、放したくない。
 でも……それが避けようのない運命だというのなら、僕はそれを受け入れるから……。

 ――そう思ったのも束の間、僕の身体を引き寄せるヘンリーの腕。僕の身体を包み込む、彼の力強い両腕……。

「言われなくたって、俺は君の傍にいる。お願いなんてされなくたって、君には俺がついてるよ。だからそんな顔するな。彼女のことだって、今すぐ忘れる必要はないんだ」
「……っ」
「辛いな、本当に辛いよな。我慢しなくていいんだ。思いっきり泣いていいんだ」

 僕を強く抱擁(ほうよう)するヘンリーの腕。それはとても温かくて……とても、優しくて。

「……ヘンリー……僕…………」

 あぁ、ヴァイオレット、ヴァイオレット。行かないで、側にいてよ、ずっとここにいてよ。
 大好きだ、大好きだ、愛しているんだ。本当に君を、君だけを……。


 僕はヘンリーの腕の中で泣き続けた。
 そんな僕を、彼は長い時間慰めてくれた。
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