【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
私がそんなことを思っていると、彼がようやく目を覚ました。
ゆっくりと開いた瞼の奥の美しいエメラルド色の瞳に、私の顔が映し出される。
「――あぁ……君か。おはよう」
彼はそう言うと、眠気まなこのまま、柔らかに頬笑んだ。
「……っ」
その笑顔に、私の鼓動が速くなる。彼の美しい笑みに釘付けになって、少しも視線を逸らせなくなる。
すると彼はそんな私の気持ちを悟ったのだろうか。ベッドに寝転んだまま頬杖をつき、ニヤッと意地悪な笑みを浮かべた。
「君はいつも俺の顔を見つめているな。顔に穴が開きそうだ」
「――っ」
あぁ、もう……!
そう――そうなのだ。彼は私のことを愛してなどいない。
けれど私の愛は……私の彼へのこの強い想いは、とっくに彼に知られてしまっているのだ。そりゃあ全く隠していないし、隠すつもりもないのだから仕方ないのだけれど。
それでも私ばかり好きなのが、なんだか少しだけ悔しくて……。
――どうしたら、この人の心が手に入るのかしら。
ここのところ、毎日のようにそればかりを考えてしまう。
彼を愛し、愛される。そうすれば、ルイスはウィリアムを助けると言った。その魂を救ってくれると、確かにそう言った。
つまり、彼に心から愛される――それが達せられたときが、私と彼の関係の終わるとき。
けれどそれでも私はこの人を愛し、そしてほんの一時でかまわないから、この人から愛されようと心に決めたのだ。だから私はもう、迷わない。