【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
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ルイスと別れた私が自室に戻ると、ハンナが朝のお茶を用意しているところだった。
彼女は私に気付くと、いつもどおり屈託のない笑顔を見せる。
「おはようございます、お嬢様! 今日もいいお天気ですね!」
それは彼女と出会った十年前からずっと変わらない笑顔。このウィンチェスター侯爵邸に来てからも、彼女だけは彼女のまま。そんな彼女の存在に、私は何度救われただろう。
ここに来た頃の私はルイスに強い猜疑心を抱いていたし、彼が次にどんな行動を取るのか警戒し続けなければならなかった。だから、よく知りもしない人間を側に置くなど到底無理なことだった。
――本当に、ハンナを連れてこれてよかったわ。ウィリアムには感謝しなくちゃ……。それにこの部屋も……。
私はソファに腰を下ろし、部屋の中を見渡す。
この部屋の居心地はとてもいい。最初は明るすぎると思ったサーモンピンクの壁紙も、白で統一された家具やソファも、窓から広がる見渡す限りの庭園も、今はとても気に入っている。
後から聞いた話だが、この部屋のものは全てウィリアムが手配したらしい。てっきり侯爵夫人が用意したと思っていたから、それを知ったときは本当に驚いた。