【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
するとそんなアメリアの心情を知ってか知らずか、ウィリアムが問いかける。
「ところでなんだが、これから二人で街に出掛けないか? 君と過ごす時間がなかなか取れず、ずっと申し訳なく思っていたんだ。だから、今日は君と過ごすと決めていた。付き合ってくれるだろうか?」
「――ッ!」
瞬間、アメリアの顔が少女のように華やぐ。
以前のアメリアとは違う、年相応の可憐な笑み。――その表情に、ウィリアムの顔もわずかばかり緩む。
「では一時間後に出よう。支度を終えたらホールに降りてきてほしい。服装はハンナに伝えておくから」
ウィリアムはそう言うと、今度はルイスを呼びつける。――そして……。
「昼食は外で食べるから不要だ」
「承知しました」
「――それで、なんだが」
「何でしょう?」
「お前もハンナと出掛けてみたらどうだ?」
――などと、とんでもないことを言い出した。
「……は? ――今、何と……」
「ハンナと出掛けたらどうだ、と言ったんだ。今日からほとんどの使用人は長期休暇に入るが、彼女はアメリアの侍女であるしそう易々と休んではいられないだろう? だが今日、俺とアメリアは外出する……となると、彼女は一日フリーになるというわけだ。せっかくだからお前がエスコートしてやればいい。費用は気にするな」
「…………」
ウィリアムの突然の提案に、さすがのルイスも沈黙する。
最近めっきりおかしな冗談を言わなくなったと思っていたところにこれだ――そう思った。
「ウィリアム様……そういう冗談はおやめください。そもそもその提案には本人の意思が全く反映されておりません。彼女だって、せっかくの休みをよく知りもしない男と過ごしたいなどとは思わないでしょう」
ルイスは言いながら、ハンナの方をチラリと見やる。――すると、ハンナはルイスの予想とは違う反応を見せた。
「――あっ……その……私、は……嫌では……ありません」
そう――なんとハンナは顔を赤らめたのである。