【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
「…………」
――そんな馬鹿な。
ルイスは困惑した。
この二ヵ月ルイスはハンナに紳士的に接してきたが、それはあくまでアメリアの侍女だからであり、それ以上でもそれ以下でもなかった。そのことはハンナだってよく理解しているはずだ。
それに、ルイスは一度だってハンナからそういう好意を感じたことはない。つまり、ハンナが自分を好いているなんてことはあり得ない――そう確信していたのだ。それなのに……。
思わぬ状況にどう反応したらいいかわからなくなったルイスは、無意識のうちにアメリアへと視線を向けた。するとこちらはこちらで、好奇と期待を混じり合わせたような眼差しを向けてくる。
それはルイスには決して理解しがたい感情であり――。
「――……」
――不本意極まりないが、こんなところで下手を打つわけにはいかない。これも仕事のうちである。
ルイスは仕方なく腹を括り、顔に笑みを張り付ける。
「ハンナ。今日一日、あなたをエスコートする栄誉を賜りたいのですが」
その言葉に、ハンナははにかんだような笑顔を見せ――。
「はいっ! よろしくお願い致します!」
――と、いつも以上に明るい声で答えたのだった。