【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
4.街歩き――セントラル通りにて
「では行ってくる。夕食までには戻る」
「いってらっしゃいませ」
ルイスは、アメリアとウィリアムを乗せた馬車をハンナと共に見送った。
そして馬車が見えなくなると、ハンナの方を振り向いた。
「では……私たちも行きますか。どこか行きたい場所があれば……」
ルイスはなるべく紳士を演じる。
本音を言えば面倒なことこの上ないが、やると決めたからにはきちんとエスコートしなければ――そう思っていた。
だがハンナから返ってきたのは、またも思わぬ反応だった。
「さっ! 行きますわよ、ルイス!」
「――は、はい?」
「早くしないと見失ってしまいますわ!」
「――!」
その言葉にルイスは悟る。
「まさかとは思いますが、尾行するなどということは――」
「そのまさかでございます! だってお嬢様が殿方と私的にお出掛けになるなんて初めてのことですもの! 後を追わずしてどうすると!」
彼女は早口でまくし立て、ルイスの腕をむんずと掴んで門の方へ歩き出す。
その迷いのない言動に、ルイスは強い眩暈を覚えた。
「では、最初からそのつもりで私の誘いを受けたのですか?」
「あら、お嫌でございました? 本当は一人でこっそり付いていこうと考えていたのですけれど、意外にもウィリアム様があのように提案してくださったので、これを利用しない手はないなと思いましたの!」
「……利用、ですか」
「それに、男女二人の方がいろいろと怪しまれませんしね!」
「……なるほど」
「あっ! まさか私があなたに気があると? ふふっ、安心してください! 私あなたには興味ありませんから!」
「…………」
ハンナの容赦ない言葉に、ルイスは自身の愚かさを痛感する。
あのとき気付くべきだった――と。