【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
5.そのとき、ルイスとハンナは
そこには多種多様な宝飾品が並んでいた。
指輪、ネックレス、髪飾りに始まり、イヤリングや時計、男性用のカフスボタンまである。
使われている宝石の種類も豊富で、比較的安価な天然石や原石を使用したものから四大宝石を使ったものまで、幅広いランクのものが揃っている。が、並ぶ品を見るに、客層は貴族メインではないということだろう。
現に、店内にいる客は中産階級らしき夫婦から、お供をつけた子爵程度の令息令嬢まで。高位貴族は宝石商を屋敷に呼ぶのが普通なので、当然とも言えるが……。
――この姿じゃなければ目立って仕方なかっただろうな。
ウィリアムはそんなことを考えながら、アメリアと共に店内を見て回った。
どれもウィリアムには安価過ぎたが、ショーケースにずらりと並ぶ光景を見る経験があまりないウィリアムには、興味深い時間だった。
そうして半分ほど見たところで、ふとアメリアが足を止めた。
「――アメリア?」
ウィリアムがアメリアの視線を追うと、そこにあるのは銀の土台にラピスラズリが散りばめられた、美しい髪飾り。
「ラピスラズリ……君の瞳と同じ色だな。それが気に入ったのか?」
尋ねると、こくりと頷くアメリア。――ウィリアムは店員を呼びつける。
「そこの君」
「はい。御用でしょうか、旦那さま」
「この髪飾りをいただこう。あとは……そうだな。サファイアやアウイナイトを使った品があれば出してくれ。他にも彼女に似合いそうなものがあれば。――値段は問わない」
すると店員は、軽装かつまだ若いウィリアムに支払い能力があるのかと、ほんの一瞬不安そうな顔をした。けれど次の瞬間には、ウィリアムの履く靴を見て目の色を変える。
「かしこまりました。どうぞ、奥の部屋へ――」
こうして二人は店の奥へと案内された。